みなさん、こんにちは。
前回に続いて、エンリッチメントのお話です。
エンリッチメントは主に以下の3つの点について整えること、というお話をさせていただきました。前回は、その中でも、一番上の「動物が種本来の行動を発現できるように整えること」に焦点を当ててお話ししています。
動物が種本来の行動を発現できるように整えること
動物が環境をコントロールできるようにすること
動物が健全に暮らせるように整えること
今回は、真ん中の項目「動物が環境をコントロールできるようにすること」について、掘り下げていきたいと思います。
エンパワーメント
「エンパワーメント」っていきなり言われても、何それ?というところかと思いますので、少しずつ説明していきますね。
英語ではありますが、一言でズバッと日本語になるようなものではありません。感覚を掴むのに少々時間がかかることかもしれませんが、とても大切なことですので、ご自身のことにも当てはめながら考えていきましょう!
エンパワーメントは、「パワー」をより強くしたようなイメージ。
直訳的には、「権限(力)を与える」になります。元々は女性の権利獲得運動から使われるようになり、その後、社会福祉やビジネスの分野でも使われるようになったそうです。ジェンダーに係る項目の中にも登場する言葉です。
その昔の「女性」の立場、現代の「ジェンダー」について、または、「社会的弱者」・・・
彼らの置かれている(置かれてきた)立場を想像してもらうとわかるかもしれないのですが、
「自分で自分の環境を変えられない(変えられなかった)」というカテゴリーに入るのではないでしょうか。
自分で自分の環境を変えられないこととは・・・
その昔、女性に生まれたなら、結婚して子供を産み育てることの他に選択肢を持つことができる人は少なかったと思います。
現代のジェンダーについて考えてみても、あらゆる事柄が壁となり、彼らが選択できることは限られているかもしれません。
自分でこうしたい!と思っても、自分の力で環境を変えられなかったり、環境を変えられることさえ知らないとしたら、みなさんはどう思われるでしょうか。ぜひ、ご自身のことを振り返って考えてみてください。
自分で自分の環境を変えられるとは?
では、「自分で環境を変えられる」とはどういうことでしょうか。
とても簡単に例えるとするなら、
「いつでも快適な温度にすることができる」というようなこと。
暑かったり寒かったりは、自分にとって不快な状況です。それを、快適な状態に、自分でコントロールできることです。
具体的に言えば、
- エアコンがどんなものかを知っている
- エアコンの操作方法を知っている
- リモコンのボタンを押すことができる
- エアコンを自由に操作する権限がある
これらの知識/技術/権限(選択肢を持つ)がある、ということです。
この他にも、「車の運転」「語学の習得」ということに置き換えても、想像していただけるのではないでしょうか。
できることが増えると、世界が広がり、不快な状況を自分で改善することができます。
自分で自分の環境を変えられるということは、「他人に動かされる(命令)」こととは違います。
自分の意志で、自分の能力を発揮して、自分にとって快適であるように、環境コントロールすること。これがエンパワーメントです。
自分で環境を変えるための知識や技術を得る機会もなく、素晴らしい能力を持っていても、発揮できる機会も得られなかった昔の女性のような生き方と比べると、どうでしょうか。
エンパワーメントは、よりよく生きていく上で、とても大切だということが少しご理解いただけたでしょうか。
犬に当てはめて考えてみる
それでは、本題の愛犬に焦点を当てて考えてみましょう。
- 犬の好き勝手にさせてはいけない
- 飼い主がリーダーになるべき
- 犬に舐められてはいけない
など、昔からの言い伝えのようなこれらのワードのおかげで、犬たちは人間に命令されて動くべき生き物・・・のように捉えられがちです。
でも、これでいいのでしょうか。
犬たちのほとんどが、能力が活かせる機会も与えず、選択肢もなく、人の指示で動くことを望まれています。
犬自身の行動のレパートリーも少なく、どうやって自分の不快から逃れればいいかわからない状況であることも多いでしょう。
私たち飼い主は、「その犬の生涯に渡りより良いケアを提供すべき立場」にあります。
それには、住環境を整え、採食エンリッチメントなどを通して、犬らしい行動ができるように整えること、というのは、前回まででお話しました。
さらに、犬が自分自身で、自分が快適にいられるように、環境をコントロールする力(権限)を与えること(エンパワーメント)が必要なのです。
ここまで、読んで
「えーーーー、それは、犬の言いなりになるってこと?それじゃ、家の中や私の生活が滅茶苦茶になるのでは・・・」
と、ゲンナリしてしまった人もいるかもしれないですね😅
安心してください。
私は、そんな無理なご提案はいたしません。
犬も人も心身ともに健全で気持ちよく生活していくにはどうするか?というカテゴリーに「トレーニング」があります。
次回は、いよいよ、ドッグトレーニングの話になります!
お楽しみにしていてくださいね😊